東京都の推進する「スムーズビズ」とは?参加するメリットは?

まもなく迎える日本人念願の東京オリンピック。

選手、サポーターの高揚感が高まる一方、交通量の増加によるビジネスの停滞が危惧されています。

そこで打ち出されたのがスムーズビズです。

「スムーズ」の語句が示す通りビジネスを円滑に維持する取り組みですが、具体的にはどのような取り組みなのか知らない企業担当者もいることでしょう。今回は、スムーズビズの概要を紹介するとともに、具体的な取り組みや参加のメリットについてお伝えしていきます。

スムーズビズとは?

スムーズビズとは、東京2020大会開催期間中の交通混雑緩和に向けた取り組みの総称です。

具体的には、場所や時間にとらわれない働き方の「テレワーク」、道路交通混雑を緩和していく「交通需要マネジメント(TDM)」、通勤時間をずらす「時差Biz」などの取り組みが組み合わさっています。

大会を機に新しいワークスタイルや企業活動を確立させるという狙いもあります。

スムーズビズが打ち出された背景

東京大会の期間は、大会関係者や観客などが1000万人訪れる見込みです。

それにより、首都圏の鉄道利用者は約1割増加する可能性あり、特に競技会場の多い鉄道エリアの「ゆりかもめ」・「りんかい線」は通勤時間以外にも混雑が予想されています。また、首都高速道路も同様で、通行料金を値上げするなどの対策をしないと混雑が2倍になると周知されています。

このような背景があり、大会運営と経済活動を両立できるスムーズビズが打ち出されたというわけです。ではなぜ、スムーズビズがメインの対策として選ばれたのでしょうか?

実は、ロンドンでの成功事例あったからです。ロンドンでは2012年のオリンピック期間中に80%ほどの企業がテレワークを実施して、交通緩和を実現した経緯があります。しかも、大会を機にテレワークが定着し、働き方が柔軟になったとして知られています。

スムーズビズの開催期間について

スムーズビズの開催期間は、2019年7月22日(月)~2019年9月6日(金)です。

そのうち、実施が強化される「集中取り組み期間」が、オリンピックとパラリンピックに合わせて、2019年7月22日(月曜日)~8月2日(金曜日)と2019年8月19日(月曜日)~8月30日(金曜日)に設定されています。

今年の開催期間はあくまで来年に向けたリハーサルといえますが、トライアルができるのは上記の期間が一度で最後です。オリンピック本番を前に取り組みの不十分である点を洗い出すことができれば、来年のスムーズビズでさらに効率的な取り組みを行えるようになります。

スムーズビズで具体的に行うことは?

スムーズビズの概要をお伝えしましたが、具体的な取り組みを定めることが肝心です。

ここでは、スムーズビズで行うべきことや、参考になる取り組みを紹介します。

公式HPで参加登録→アクションプランの策定

まず、スムーズビズの公式HPで参加登録を行います。

それが済み次第、大会時の混雑回避や企業活動継続を目的とする「2020年アクションプラン」の策定に移っていきます。取り組みの項目は事業関係・働き方・通勤関係・物流関係などに分かれています。

事業関係の項目であれば、大会期間中に会議やイベントを行わないという取り組み、働き方の項目であれば、大会期間中に有給休暇や夏季休暇の取得を推進する取り組みなどを設定します。

内容が定まったら、実施する部署や責任者、実施期間などを決定して実施に備え、スムーズビズ期間に策定したプランを実行していく流れです。

事前にスムーズビズの周知が必要となりますが、公式HPにある専用のロゴやポスターが無料でダウンロードできるので便利です。

具体的な大手企業の取り組みは?

具体的な大手企業の取り組みが2019年5月29日に開催されたスムーズビズキックオフイベントで紹介されています。

キューピーは翌日対応としていた取引先への納品日を翌々日に変更し、効率的な配送を目指します。ヤマトホールディングスは宅配ボックスの拡充で再配達を抑制したり、外国人観光客の手荷物預かり所の増設で鉄道混雑を緩和したりするとのことです。そのほか、鹿島建設は資機材の搬出入を日中のすいている時間帯に設定したり、工事現場の工事車両を削減したりする方針です。

スムーズビズの先陣を切る都庁の取り組み

スムーズビズ期間にどのような取り組みを行えばよいのか迷ったら、一先ず都庁の取り組みをお手本にするとよいでしょう。下記に都庁の取り組みについて項目と内容をまとめてみます。

取組項目内容
テレワークの実施本庁の約半数(5000人)が週一回以上テレワークを実施。
都庁発注工事の調整大会関係地域における工事の発注時期を調整。都庁発注の道路工事や企業者の路上工事などが対象。
庁有車の利用抑制大会期間中に庁有車の利用を軽減。高速道路や競技会場周辺のルートをなるべく利用しないようにする。本庁や出先事業所の業務が対象。
ゴミの削減古紙やシュレッダー紙は大会前後にまとめて搬出。水筒や弁当箱の持参を職員に呼びかける。例年の約40%削減が目標。
来庁者へのスムーズビズの周知都民が訪れる都施設や都庁各局などにチラシやポスターを大会時まで掲示する。

さらに詳細な取り組みが知りたい方は「都庁2020アクションプラン」を参考にしてみてください。

スムーズビズに参加するメリット

スムーズビズの取り組みは企業の直接的な利益を生み出すものではありません。時には取引先や仕事量などの関係から協力しづらいケースもあることでしょう。それにもかかわらず各企業がスムーズビズに参加するのには理由があります。スムーズビズにはどのようなメリットがあるのでしょうか?

大会期間中のトラブルが減る

企業が参加する大きなメリットは大会期間中に業務トラブルを軽減できることです。各企業が交通緩和を推進することで、自社の輸送も円滑になり、大会中に商品や部品が届かないといった事態を防ぐことにつながります。

テレワークの情報取得に役立つ

東京都からスムーズビズのイベント情報や、働き方改革に関する情報、東京2020大会における混雑予測情報などを取得できるようになります。スムーズビズは特にテレワークの推進を目的としているため、テレワークを推進したい企業にとっては情報収集の機会として有益です。

働き方の無駄を見直せる

アクションプランで取り組みを設定する過程で、今までの業務の無駄を見直す機会を得られます。無駄な支出や時間を減らすことは、結果として今後の企業活動を効率的に進めることに直結し、利益をもたらすことになります。

まとめ

以上、スムーズビズについての概要をお伝えしました。オリンピック本番にいきなりスムーズビズの取り組みを行うのは難しいといえます。その点で、トライアルができる今年のスムーズビズ期間は貴重です。企業の働き方を変えるチャンスともなるので、今後テレワークを視野に入れているのであれば、ぜひこの機会を逃さないようにしてください。