効果的なテレワークの実施にかかせないのが社内ルールです。テレワークで業務を行う人(テレワーカー)が業務を効率的にかつ円滑に遂行するための社内ルールの作成ポイントについてご紹介します。
Contents
テレワークとは
テレワークとは、時間や場所にとらわれない働き方のことです。リモートワークという言い方をする企業・団体もあります。
情報通信技術(ICT : Internet Communication Technology)の発展によりインターネットを介して地理的に遠くの人と働くことが可能になり、オフィスの外(自宅やカフェ、サテライトオフィスなど)で働いたり、国外の仲間と働いたり、従来の働き方と違う様々な就業形態が可能になりつつあります。
テレワークツールの選定や導入における課題など、テレワーク導入にまつわる様々なTipsについて知りたい方はこちらのページをご覧ください。
テレワークのための社内規程や運用ルールの必要性
テレワークを導入すると、オフィス勤務では想定していなかったこと(働く場所や)が起こります。そのため、テレワークのための規程や、具体的な運用ルールを決める必要があります。
これは、実施範囲を特定することにより従業員間での不公平感をなくしたり、従業員の適切な管理を行うために必要なことです。
就業規則についても見直しが必要
テレワーク勤務規程は、就業規則の一部という位置づけで就業規則を補完する目的で作成します。
テレワーク導入に際して新しく取り上げた事項でも、一般的に通常勤務にあてはまるケースがあれば、就業規則に集約する事が望ましいです。
- 労働時間のような原則的なことは就業規則の改定が必要
- テレワーク勤務限定の事項はテレワーク勤務規程に盛り込んだ方が良い
就業規則・規程の改定については、こちらの記事を参考にしてください。
テレワークの実施範囲
テレワーク対象者の選定
- 社員全員を対象とするか特定の業務担当者のみか
- 特定の家庭の事情がある人のみか
- 心身的に通勤が難しい人のみか
- テレワークを希望者しない人はどうするか
- 入社歴を考慮するか(入社直後の社員も対象とするか)
業務により対象を選定する場合は、テレワークで実施しやすい業務と実施しにくい業務があります。対象業務の選択は、テレワークを実際に実施している企業によるアンケート結果を参考にしてみると良いでしょう。
平成27年度 厚生労働省 テレワーク活用の好事例集 6.1. テレワークで実施している仕事(pdf)
実施時間
- 始業・終業時刻を決めるか、フレックスか
- 裁量労働制にするか
- 予定していた労働時間の変更・中断が必要になった場合はどう扱うか
実施頻度
- 毎日か
- 1日のうちの指定の時間のみか
- 1週間のうちの所定の日だけなのか
- 実験的に期間を定めるか、継続していくのか
実施場所
- 自宅
- サテライトオフィス
- モバイル(コワーキングスペース、カフェ、など)
テレワークの申請と承認方法
申請・承認のワークフローを作成する、申請・承認用システムを準備する、などスムーズに手続きを行えるようにしましょう。また、誰が承認してテレワーク業務を行うか、部署内や社内で情報が共有されていない状態を避けるためのプロセスも必要かもしれません。
申請
- いつ提出(テレワークでの業務が確定した時だけか、年/月/週/日ごとか)
- 誰が(テレワーカー本人なのか人事・上司か)
- どこに(人事、部署、上司)
- どうやって(メール、口頭、システム、紙媒体)
- 条件(人事・上司との面談を経て)
承認
- 条件(テレワーク条件を満たしているか、面談で協議か)
- 申請者が人事・上司の場合、テレワーカー本人の承認も必要
- 申請者がテレワーカーの場合、人事・上司の承認が必要
例外対応
承認後の申請項目に変更が発生した場合のプロセス
テレワーク社員の管理
既に紹介した平成27年度 厚生労働省 テレワーク活用の好事例集によると、テレワークを実施していない企業の7割が勤務管理を懸念点として挙げており、テレワークを実施している企業でも3割が課題点とし、それぞれ懸念・課題項目中トップとなっています。正しく公平に管理できるよう注意を払い、かつ管理者・テレワーカー両者の負担が増えない方法が必要です。
勤怠管理
- 始業・終業時刻の記録が必要か
- 誰に報告(人事・上司)
- どの方法で(メール、電話、管理ツール)
- 始業・終業時刻の変更、業務中断が必要になった場合の連絡方法(誰に、どの方法で)
在籍管理
- 在籍状況の管理が必要か
- 必要な場合、どの方法で(メール、管理ツール)
業務管理
- 進捗の報告頻度はどの程度か(毎日、毎週、毎月、成果物の完成時のみ)
- どの方法で(メール、電話、管理ツール)
テレワークにかかる費用負担
テレワーク実施場所によっても違いますが、会社負担か、テレワーカー負担か、割合はどうするか、など事前に細かく明確にする必要があります。
- 情報通信機器の費用
- PC本体や周辺機器、携帯電話・スマートフォンを会社から貸与か
- 個人所有のものを使用するか、その場合の会社負担はあるか
- 機器の故障時のコストはどうするか
- 通信回線費用
- 工事費や基本料金、その他使用料金は会社負担か
- 会社負担の場合、額の割合はどうするか
- 文具・備品
- 誰が負担するか
- 会社から支給されるのか、テレワーカーが購入か
- 清算方法はどうするか
- 交通費
- 会社に出勤する際の交通費はどうするか
- 客先までの交通費の清算はどうするか
- 郵便・宅配料金
- 誰が負担するか
- 着払いも可能か
- 清算方法はどうするか
- 業務に関わる教育や研修
- OJTに代わる研修はあるか
- 安全衛生・健康
- 自宅の場合の作業環境づくりに使う費用は誰が負担するか
- 産業医の指導は受けられるか
- 水道光熱費
- 業務使用分は会社負担か
- 会社負担の場合、額の割合はどう決めるか、支払い方法はどうするか
- 作業場所の確保
- シェアオフィスやコワーキングスペース利用料金は会社負担か
社内外とのコミュニケーション
上司に業務状況を伝えるだけでなく、同僚に業務や専門技術の相談をしたり、他部署と顧客の動向について情報共有したり、と様々なコミュニケーションが必要となります。
- テレワーカーの疎外感の払拭のためには
- ちょっとした質問や雑談を気軽に行うための方法は
- テレワーカーが管理職で、部下が社内勤務の場合はどう連絡しあうか
- 顧客からテレワーカーに電話があった場合の対処はどうするか
- テレワーカーの抱える不満点・問題点を、誰とどのように共有するか
テレワーク社員の評価方法
目標管理制度のような「定量的評価」の場合、達成率や成果物の数値化で比較的評価が容易ですが、コンピテンシー評価のような「定性的評価」の場合、テレワーカーが不利に評価されないよう評価基準ルールの設定が必要です。
まとめ
最初はガイドラインやガイドブックを参考に社内ルールを作成し、課題が出たらそのつど解決方法を探して社内ルールを改善していくと良いでしょう。総務省のまとめた導入企業の事例一覧によると、社内勤務者への電話応対などの雑務負担が増えた、といった課題もありました。テレワーク導入に関する社内ルールといっても、テレワーカーだけに意識を傾けず、社内勤務者の心身的負担が増えないよう注意を払う必要もあります。また、現在の状況では実施が難しい場合(物理的な操作を必要とする業務など)でも、情報通信技術や新しい技術を駆使して今までのやり方を変えることで解決できるかもしれません。
参考