テレワークに従事する人(テレワーカー)にも労働基準関係法令が適用されます。社内勤務では生じないことがテレワーク勤務で生じることがあるため、既存の就業規則の変更や、新しくテレワーク勤務規程の作成を考慮する必要があります。この記事では、厚生労働省委託事業として日本テレワーク協会が作成したテレワーク勤務規程作成の手引き(平成22年10月改訂)などを基に、就業規則・テレワーク勤務規程を作成・改定するにあたり要点をまとめました。
Contents
テレワークとは
テレワークとは、時間や場所にとらわれない働き方のことです。リモートワークという言い方をする企業・団体もあります。
情報通信技術(ICT : Internet Communication Technology)の発展によりインターネットを介して地理的に遠くの人と働くことが可能になり、オフィスの外(自宅やカフェ、サテライトオフィスなど)で働いたり、国外の仲間と働いたり、従来の働き方と違う様々な就業形態が可能になりつつあります。
テレワークツールの選定や導入における課題など、テレワーク導入にまつわる様々なTipsについて知りたい方はこちらのページをご覧ください。
テレワーク導入の際には就業規則の見直しを
就業規則は従業員の労働条件や服務上の規律など、会社と従業員(=労使)の間で合意するものです。テレワークを導入する際には、オフィス勤務のみの場合では想定していないケース(勤務地やアセット管理など)が出てくる可能性がありますので、一度見直しをする必要があります。
就業規則・規程をどう考えるか
テレワーク勤務規程は、就業規則の一部という位置づけで就業規則を補完する目的で作成します。
テレワーク導入に際して新しく取り上げた事項でも、一般的に通常勤務にあてはまるケースがあれば、就業規則に集約する事が望ましいです。
- 労働時間のような原則的なことは就業規則の改定が必要
- テレワーク勤務限定の事項はテレワーク勤務規程に盛り込んだ方が良い
テレワーク規程についてはこの記事でも触れますが、具体的な運用ルールの作成に関しては、こちらの記事を参考にしてください。
規程は就業規則を補完する目的で作られます(育児・介護休業等規程など)。
規定は一つ一つの決まり事であり、規程は規定をまとめたものです。
テレワーク導入に際しての就業規則改定ステップ
既存の就業規則がある場合、そのままでテレワーク勤務に関わる事項にも対応できるか検証し、必要があれば改定します。テレワーク勤務限定の事項はテレワーク勤務規程に盛り込みます。
- 既存の就業規則がテレワーク勤務に対応可能か検証
- 改定が必要な場合、就業規則の変更案を作成
- 就業規則で補完されない場合、テレワーク勤務規程を作成
- 全社員へ説明 → テレワーカー以外の理解や協力も必要なため
- テレワーク導入に向けて、問題点の確認・改善
- 改定が必要な場合
- 労働者代表の意見聴取
- 改定後の就業規則を従業員へ周知
- 就業規則の変更、テレワーク勤務規程の新設を、所轄の労働基準監督署へ提出
- テレワーカーへの労働条件の明示
- テレワーク実施
テレワーク導入における就業規則改定のポイント
実際に就業規則を改定する際は、労働契約法、労働基準法に留意する必要があります。
- 労働契約において、労働条件の変更を明示し、合意を得る必要がある
- 就業規則の各項目をチェック(例)
- 採用及び異動:就業場所の変更や従事する業務内容の変更を命じることができるか
- 服務規律:セキュリティの面から遵守項目が足りているか
- 労働時間、休憩及び休日:事業場外のみなし労働時間制の規定があるか
- 賃金:テレワーカーが負担する費用を手当てで補う場合の規定があるか
- 安全衛生・災害補償:テレワーカーに必要な労働安全衛生面についての規定があるか
- 教育訓練:テレワーカー対象の特別な教育・研修についての規定があるか
テレワーク勤務規程(例)
在宅勤務を想定したテレワーク勤務規定の項目の例です。
- テレワーク勤務規定が就業規則の一部であることの定義
- テレワーク勤務の目的
- テレワーク勤務の定義
- テレワーク服務規律
- テレワーク勤務時の始業・終業連絡
- テレワーク勤務対象者の範囲
- テレワーク勤務対象者の要件
- テレワーク勤務の対象業務
- テレワーク勤務の申請と承認
- テレワーク勤務時の労働時間
- テレワーク勤務時の給与
- テレワーク勤務時の安全衛生
- テレワーク勤務時の費用負担
- テレワーク勤務時の連絡体制
- テレワーク勤務時の教育訓練
テレワーク勤務に関わる書類様式
以下のようなテレワーク勤務に関わる書類の様式を決める必要もあります。
- テレワーク勤務実施申請書
- テレワーク勤務許可申請書
- テレワーク勤務同居人承諾書
- テレワーク勤務辞令
- テレワーク勤務適性チェックリスト
まとめ
法律に関わるため、テレワーク導入にあたり最も慎重に進めていくべき事項が、今回紹介した就業規則・テレワーク勤務規程の作成・改定です。判断が難しい事も多いと思いますので、所轄の労働基準監督署や社労士、弁護士と相談・確認していく事が必要となります。そうすることで、労使トラブルを防ぐことにもなります。
参考
- テレワーク相談センター テレワーク勤務規程作成の手引き(平成22年10月改訂版)
- テレワーク相談センター テレワークに関する社内ルール作り