近年、政府が提唱する働き方改革の後押しもあり、在宅勤務をはじめとする「テレワーク」を導入する企業が増えています。
確かに、インターネット環境の整備やコミュニケーションツールの進化により、数年前に比べて時間や場所を有効に活用した柔軟な働き方ができるようになりました。
しかし、2019年の現在においてもテレワークが普及しているとは言い難い状況です。
この記事では、企業がテレワークの導入を見送る理由と、テレワーク導入の際のポイントを解説していきます。
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日本の企業のテレワーク導入状況
2017年時点での国内のテレワーク導入率は、従業員500人未満の中小企業のテレワーク導入率は4.7%、従業員500人以上の大企業では23.6%でした。
このデータから読み取れるように、テレワークは規模の大きい企業ほど導入率が高く、中小規模の企業の導入率は少ない割合を示しています。
生産性の向上やコスト削減が利点とされるテレワークですが、なぜ規模の小さい企業ほど導入に消極的なのでしょうか。
企業がテレワークの導入を見送る理由
企業に恩恵をもたらすはずのテレワークが導入を見送られる理由を考えてみましょう。
物理的な作業を伴い、テレワークすることが不可能だから
物理的な作業を伴うために、テレワークを導入することが困難なケースがあります。
たとえば介護事業では、現場で働く従業員がいなければ事業を回すことができず、テレワークの導入が見送られるケースが少なくありません。
テレワークでやることが決まっていない
中小企業は少ない人員で事業を回すために、一人の従業員が複数の仕事を行うことが多く、大企業に比べて誰がどの業務を担当するかが明確に定義されていないケースが少なくありません。
人手不足に悩む企業であれば、たとえば一人の従業員が現場での業務を行いながら、同時にバックオフィス業務もこなすというころもあります。
しかし、テレワークで行う仕事が明確に定義されていなければ導入することはできません。
「テレワークに適した仕事が無い」ことを理由にテレワークの導入に否定的な企業が見受けられますが、テレワークで行う仕事を定義しなければ、適した仕事かどうかの判断すらできないのです。
テレワークの仕組みの未整備
テレワークの導入に否定的な企業では、テレワークを実現するための仕組みの未整備も考えられます。
自宅やオフィス以外の場所でテレワークを行う場合、企業の規模や業務の状況に応じて、テレビ・Web会議システム、チャットツール、ファイル共有ツールなどのICTツールを活用して労務管理・進捗管理を行います。
ICTツールを活用するためには、社内外のネットワークやインフラ、セキュリティーの部分に手を付けなければならず、導入した場合は従業員がある程度使えるようになる必要があります。
さらに、導入や維持のコストがかかることも相まって、テレワークの導入が見送られてしまうのです。
テレワークのネガティブな印象が強い
もっともホンネの部分に近い、テレワークを導入しない理由が「テレワークにネガティブなイメージがあるから」ではないでしょうか。
テレワークについて、「社員が仕事をサボらないか不安」「顔が見えないからコミュニケーションが取りづらい」など、ネガティブな印象を持つ人は少なくありません。
「報・連・相」という言葉があるように、伝統を重んじる企業ほどフェイス・トゥ・フェイスのコミュニケーションを重視しています。
そのような企業では、社内のフェイス・トゥ・フェイスを重視する管理職が多く、テレワークを導入すれば従来どおりの労務管理や進捗管理、評価制度ができなくなると導入に難色を示します。
したがって、在宅勤務を希望する社員がいても、管理職がテレワークへの先入観から難色を示せば、導入が見送られてしまうケースが多いのです。
テレワークにおけるコミュニケーションの懸念は、チャットツールなどの「プレゼンス機能」で解決できる場合があります。
こちらの記事をご覧ください。
テレワーク導入を推進するためのポイント
それでは、テレワークを導入するためにはどのような課題の解決方法があるでしょうか。
テレワークへの理解を深める
テレワークとはどのような働き方か、もたらされる恩恵は何か、実際にテレワークを導入している企業の成功事例など、企業内のテレワークへの理解を深めましょう。
たとえば、全国の主要都市ではテレワークによるコミュニケーション、マネジメント、セキュリティーに関するセミナーが開催されています。
さらに「なぜリモートワークを導入するのか」の目的を明確にすることも重要です。自社の課題を洗い出し、ソリューションとしてリモートワークが最適かどうか、社内で意識共有を行います。
テレワーク導入に適した労働環境を作る
テレワークへの理解を深め、導入を検討する段階になったら、テレワーク導入に適した労働環境を作り上げる必要があります。
サテライトオフィスや自宅、外出先でも社内と同等程度の仕事ができるように、インフラの整備、セキュリティーの確保、ICTツールの導入を進めていきます。
さらに、テレワークに準拠した労務管理、進捗管理、評価制度の構築も重要です。
サテライトオフィスの活用、テレワーク対応型の評価ツールの導入など、従来型の企業ほど制度の刷新が求められます。
まとめ
テレワークの普及が進んでいない背景には、「会社に出勤して働く」という従来型の働き方を覆すもので、企業の根本的な体質、意識を改革するほどのメリットを感じていない企業が多いからと考えられます。
テレワークの導入を検討している企業は、オフィスに依存せざるを得ない業務を少しずつ減らしていき、一方でICTツール等を活用してテレワーク導入に適した環境を作り上げていくことが、テレワークによる働き方改革の成功への鍵となるでしょう。