東京オリンピック・パラリンピック2020まであと1年。テレワーク導入でBCP対策を。

2020年の東京オリンピック・パラリンピックの開催まで、あと1年を残すところとなりました。

オリンピックがもたらす経済効果として、2015年12月に日本銀行は「実質GDPを毎年0.2%~0.3%押し上げる」と予想しています。

一方で、オリンピック期間中には外国人観光客がのべ1,500万人、東京に来場すると考えられており、東京都内、近郊の公共交通機関は対策を迫られています。

そこで、各省庁、東京都および経済団体、企業は「働き方改革」の運動を展開、来るオリンピック・イヤーの大混雑の打開策のひとつとして「テレワーク」の導入が検討されています。

今回は東京オリンピック2020に備えたテレワーク導入の動きについて解説します。

東京の通勤事情とオリンピックによる影響

テレワークについての解説の前に、まずは現状の東京の通勤事情とオリンピックによる影響を見ていきましょう。

東京オリンピック2020のメイン会場となる国立競技場(オリンピックスタジアム)は、東京都新宿区にあります。会場の最寄り駅は都営大江戸線「国立競技場駅」、JR総武線「千駄ヶ谷駅」「信濃町駅」です。まさに都心のど真ん中がオリンピックの開催地となるわけですが、競技場に来場する人の多くが東京メトロ・都営地下鉄線を利用すると予想されています。

東京メトロ・都営地下鉄の現在の乗車数は、一日あたり平均850万人です。オリンピック期間中の一日あたりの会場来場者数は90万人と予想されているため、乗客数が約10パーセント以上増加すると見込まれています。

2012年ロンドンオリンピックの事例

現状のまま東京オリンピック2020を迎えてしまうと、オリンピック期間中の利用者像で確実に公共交通機関はパンクし、都市機能不全を起してしまうでしょう。

政府は東京オリンピック2020に起こりうる交通混雑の回避、および事業継続性の確保(BCP)の観点から、「働き方改革」の切り札とも言えるテレワークの導入・実施を推進しています。

テレワークはICT(情報通信技術)を活用し、在宅勤務やサテライトオフィス勤務などの時間と場所を選ばない柔軟な働き方のことです。

なぜ政府は、東京オリンピック2020に向けてテレワークの導入・実施を推進しているのでしょうか。

2012年に開催されたロンドンオリンピック・パラリンピックでは、外国人観光客などの来場者による交通機関の混雑が生じるとの予測から、市内の企業の約8割がテレワークを導入したという事例があります。

企業の協力もあり、ロンドンオリンピック機関中は市内の混雑が解消されました。さらには、テレワークを実施した企業の50パーセント以上がワークライフ・バランスの向上、従業員の満足度向上につながったと回答しています。

つまり、2016年より政府が推し進めている「働き方改革」は、ひとつに東京オリンピック2020の開催をきっかけとした企業のテレワーク導入というねらいがあるのです。

テレワーク・デイの取り組み

「テレワーク・デイ」とは、東京オリンピック2020の開会式にあたる2020年7月24日のちょうど3年前にあたる2017年7月24日をテレワーク・デイと定め、その日から一斉に企業・団体・官庁に在宅勤務やモバイルワークなどのテレワークを一斉に実施するよう呼びかける運動です。

2017年より大企業や官庁を中心にテレワークが試験的に導入され、約950団体・6.3万人が参加し、大きな一歩を踏み出しました。

テレワーク・デイに参加する企業・団体は、テレワークを応援する団体が提供するノウハウ、ワークスペース、ソフトウェア等で試験的に導入、社内に柔軟な働き方を浸透させています。

オリンピック対策でテレワークを導入するメリット

オリンピック対策として始まった「テレワーク・デイ」ですが、この運動に参加してテレワークを実施、あるいは実験的導入をするとどのようなメリットが得られるのでしょうか。

テレワーク応援団体の協力を得られる

これまで社員がオフィスに通勤して働いていた企業が、いきなりテレワークを導入することになっても、何から手を付けていいのかわからないことがほとんどです。

テレワーク・デイに参加すれば、テレワークのノウハウやワークスペース、ソフトウェア等を提供する団体の協力を得られます。

応援団体の支援を受けられるため、テレワークの導入スムーズにでき、なおかつ導入費用も抑えることができるのです。

通勤ストレスの軽減

テレワーク・デイはそもそも交通混雑の回避策がスタート点ですので、在宅勤務やモバイルワークによって従業員の通勤ストレスの軽減に期待できます。

オフィスに通勤しなくてもICTとモバイル端末を活用すれば、自宅やカフェ、セカンドオフィスにいながら仕事をしたり、会社の社員とコミュニケーションを取ったりすることができるのです。

時間の有効利用

東京都内の企業には、東京都外から1時間以上かけて通勤している人も少なくありません。テレワークで在宅勤務ができるようになれば、通勤・帰宅にかかる時間を仕事に充てるなど有効活用ができます。

生産性の向上

テレワークが目指すところは、通勤ストレスの軽減や時間の有効活用による企業の生産性の向上です。

たとえば、従来の働き方であれば出産や育児、介護などで会社を休んだり、辞めたりせざるを得ない社員もいましたが、レワーク導入で働く時間と場所が選べるようになれば、優秀な社員を手放す必要もありません。

テレワークによって企業に柔軟な働き方が根付けば、生産性の向上だけでなく、他業種とのコラボレーションやオープンイノベーションが進むとも言われています。

まとめ

東京オリンピック2020、テレワーク・デイへの参加を機に、テレワークの導入に舵を切る企業が増えています。

テレワークには本稿で紹介したさまざまなメリットがある一方、情報漏えいなどのセキュリティ面でのリスクや、オフィスと外部の社員との接触が希薄になるコミュニケーション面の課題もあります。

これらの課題を克服しつつ、来る2020年の東京オリンピック・パラリンピックの開催に備えることが、テレワーク導入を検討する企業の今後の課題です。

実際にテレワーク・デイをきっかけにリモートワークや自宅勤務・サテライト勤務を導入、成果を上げている企業が増えています。まずは導入に成功した企業の事例を学ぶことも、テレワークの理解を深める第一歩となるでしょう。