現在、晩婚化から高齢出産が多くなりつつありますが、第一子出生時の母親の平均年齢は2017年時点で30.7歳(1985年では26.7歳)です。この年齢は、学部卒の人で勤続8年、院卒の人で勤続6年の時点で第一子を授かっていることになります。入社6~8年といえば、社会人としての経験もつみ、まだまだ体力のあるいわゆる働き盛り世代。企業としては、どんどん活躍してもらいたい世代といえるでしょう。
一方で、第1子出産前後の女性の継続就業率は2016年時点で53.1%となっており、約半数の女性が出産の前後で一度仕事を辞めていることになります。
そんな中、子育て世代の離職を防ぐために、テレワークなどの柔軟な働き方を導入する企業も出てきました。シゴトバでは、テレワーク導入を検討されている企業の担当者の方々向けに、テレワークの導入が子育て世代に実際役立つのかについてご紹介します。この記事では保育園入園前の赤ちゃんがいる子育て世代の社員がどのようにテレワークを利活用できるかについて考察しました。
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はじめに:育児休業とは
テレワークについて考える前に、まず育児休業(育休)についておさらいしましょう。現在、出産後の女性は8週間の産後休業を経て育児休業を取得するのが一般的です。現在では多くの女性(2017年で83.2%)が育児休業を取得しています。
介護休業等育児又は家族介護を行う労働者の福祉に関する法律(通称 育児介護休業法)には、次のように定められています。
労働者は、その養育する 1 歳に満たない子について、その事業主に申し出ることにより、育児休業をすることができる。育児介護休業法
平成29年10月の法改正により、様々な条件がありますが現在では子どもが最大2歳になるまで育休をとることが認められています(厚生労働省 改正育児・介護休業法のポイント【PDF】参照)。一方、東京などの都市部では0歳児でないと入園できないため、子どもが1歳になる前に育児休業を切り上げる人も多いです。一方、教員や一部の大手企業では3年間の育児休業が認められている場合もあります。
男性も育休の取得は可能
育休の取得は男女問わず、法律で認められた労働者の権利です。取得する際の条件などはありますが、条件を満たす労働者から申し出があった場合は事業主はそれを認めなければいけません。この時、パートナーが働いているか、自分の親と同居しているか、などは問われません。これを守らない場合、「育児介護休業法」における罰則規定はないものの、各都道府県労働局雇用環境・均等部(室)が調査に入り、事業主に対して厳しい行政指導が行われます。
2017年度の雇用均等基本調査によると男性の育休取得率は5.14%(女性は83.2%)です。政府は2020年までに13%まで引き上げることを目標としており、長期的にみると上昇傾向にあるものの依然低い数値にとどまっています。
産休は産前産後休業の略称で、出産前後に女性が取得するものです。育休は育児休業の略称で、基本的に1歳未満の子ども(養子を含む)を養育する男親・女親が取得するものです。産前(予定日前)6週間(多胎妊娠の場合は14週間)、産後8週間が産前産後休業となります。産前については、本人の希望があれば就労させることができますが、産後6週間はたとえ本人の希望があったとしても就労させてはいけません。
赤ちゃんとテレワークについて考える
まず、先述の通り、育休を取得できる条件のそろっている社員から育休の申し出があった場合は事業主はこれを拒否することはできません。男女関係なく、社員には育児休業を取得できる権利があり、事業主にはこれを認める義務があります。「テレワークしてでもいいから育休をとらずに働いてほしい」と社員に要求することは違法となりますので注意しましょう。
一方、社員が育休をとらないと決めた場合については、テレワークを上手に活用することができるでしょうか。複数のパターンについて考察します。
大人1人でテレワーク
結論から言うと、大人が家に1人だけ(父親のみ、もしくは母親のみ)の状況ではこれはほぼ不可能です。生まれたばかりの赤ちゃんは、はじめ睡眠リズムが定まっておらず、短めの睡眠を少しずつとって過ごします。成長するにつれて夜にまとまった睡眠をとるようになりますが、それに伴って黄昏泣きや夜泣きが始まる赤ちゃんもおり、「この時間には確実に寝ている」ということを予測するのが非常に困難です。また、赤ちゃんが目覚めている間に仕事ができるかどうかについては、赤ちゃんの個性によるところが非常に大きいです。まれにニコニコ起きているだけの赤ちゃんもいますが、こればかりは生まれてみないことには分かりません。また、赤ちゃんの成長には段階があり、昨日までニコニコしていた赤ちゃんが急成長期に突然ぐずりだすこともよくあります。記事執筆などの隙間時間に少しづつ進めることのできる仕事ならば可能性はありますが、チームでの仕事や急な対応を必要とする仕事はできないと考えたほうがいいでしょう。
1人が育休で1人がテレワーク
それでは、片方の親が育休をとって片方の親がテレワークをするパターンではどうでしょうか。
(母親:育休)x(父親:テレワーク)パターン
今回ご紹介する中で最も実現可能性が高いのがこのパターンではないでしょうか。先ほどもご紹介しましたが、現在父親の育児休業取得率は依然数パーセントにとどまっており、さらに取得期間も1週間未満が58.3%ととても短いものになっています。一方で「産褥期(さんじょくき)」と呼ばれる母親が最低限の体力を回復するまでに要する期間はおよそ1か月とされ、実家からのサポートを得られない場合産後の母親の精神的・身体的な負担はとても大きいものになります。
病院から退院すると、いきなり赤ちゃんと二人きりの生活がはじまります。常に赤ちゃんを気にする生活がはじまり、トイレに行く、お茶を飲む、シャワーを浴びるなどのささやかなことが、自分のリズムではできなくなります。そんなとき、パートナーがテレワークをして在宅していることで、母親側の精神的な負担は大きく軽減されます。父親はあくまでも就労中なので、長時間赤ちゃんをみることはできません。しかし、たとえばトイレに行きたいときに、赤ちゃんを一人で寝かせておくのと、同じ寝かせているにしても隣に大人がいると分かっているのでは、安心感が異なります。
また、日本では産褥期は母子ともに外出を避けるように言われますが、平日に母1人子1人の生活が続くと、母親にとって大人と会話をする機会が激減します。これは、特に今まで働いていた女性にとって大きな精神的なストレスとなります。父親がテレワークをして在宅していれば、朝食・昼食・夕食を共にとることができ、夫婦で会話をすることができます。
(母親:テレワーク)x(父親:育休)パターン
産後8週間が経過すると(本人からの申し出があった場合は6週間)、母親は就労することができます。父親が育休を取得できるのであれば、このパターンもオプションのひとつとなるでしょう。テレワークの規則によっては、休憩時間をとって日中授乳することも可能となります。
育児休業中にテレワーク
緊急対応でテレワーク
育児休業中は働いてはいけないと思われるかもしれませんが、一時的・臨時的な業務については行うことが可能です。このような臨時の対応について一々出社する必要があるよりも、テレワークを使える体制にしておくとより素早い対応が可能となるでしょう。ただし、育児休業中は育児休業給付金をもらうことができますが、支給単位期間(※1)中に就業している日が10日を超えて、かつ就業している時間が80時間を超えるときは、育児休業給付金は支給されません。
休職中のPC貸し出しと社内イントラネット閲覧
日産では、休職中(育児休業や介護休業)の社員に対して会社のPCの貸出を行っており、社員は休職中であっても社内イントラネットを閲覧することができます。これは、実際に就労するわけではないのでテレワークとは異なりますが、休業中であっても疎外感がなくなったり、職場復帰がスムーズになるというメリットがあるようです。
まとめ
今回の記事では、保育園入園前の赤ちゃんのいる社員がどのようにテレワーク制度を活用することができるのかについてご紹介しました。日本には、育児介護休業法があり、育休は男女の労働者に認められた権利です。一方、男性の育休取得率はいまだ低く、核家族化の進む現代では乳児期における子育ては女性の負担が大きい「孤育て」が多いのが現状です。テレワークは育休の代わりにはなりませんが、育休の取得が難しい場合にはあると助かる制度です。今後も、シゴトバでは社員のライフステージにおいてテレワークをどのように活用できるのか、ご紹介していきたいと思います。