地方のサテライトオフィスなどで仕事を行うふるさとテレワーク。平成26年度より国が実証事業を開始し、名乗りをあげた自治体が先行して取り組んでいます。
今回の記事では、実証事業に参加した自治体のふるさとテレワークへの取り組みをご紹介します。
ふるさとテレワークとは何か知りたいという方は、こちらの記事もご覧ください。
Contents
事例1.北海道北見市
北見市は、オホーツク海に面した都市です。人口は117,710人(平成31年1月末)で、農業、漁業のほか、「日清製粉」などの企業も立地しています。
http://www.city.kitami.lg.jp/docs/2010120600156/
ふるさとテレワークに取り組む背景
北海道ならではの大自然やグルメを活かし、IT企業を中心にサテライトオフィスを誘致する「雇用型」ふるさとテレワークを推進しています。
ふるさとテレワークの取り組み
平成27年度「ふるさとテレワーク推進のための地域実証事業」に参加し、ふるさとテレワークを開始しています。
職住一体型オフィス
企業でログハウスの一軒家を借り上げる、職住一体型のサテライトオフィスを提供しています。
コワーキングスペース
北見駅から徒歩3分の好立地に「サテライトオフィス北見」を設置しています。オープンな場に都市部からのワーカーを誘致し、地元の学生やテレワーカーとの交流が図れるようデザインされています。
事例2.和歌山県白浜町
和歌山県南部に位置する白浜町。人口は21,582人(平成31年1月末)で、主な産業は観光業と漁業、農業です。
http://www.town.shirahama.wakayama.jp/
ふるさとテレワークに取り組む背景
白浜町では平成16年に「白浜町ITビジネスオフィス」を設置しましたが、入居した2社が数年で撤退。地元との交流が少なかったことが要因と考え、お祭りへの参加など地元との交流を重視するようになります。企業のサテライトオフィスを誘致する「雇用型」ふるさとテレワークを推進しています。
ふるさとテレワークの取り組み
白浜町は、平成27年度「白浜町におけるパブリッククラウドサービスを利活用した先進的テレワーク推進及び生活直結サービス構築・検証事業」に参加しました。
2015年 セールスフォース・ドットコム
企業向けクラウドコンピューティング・サービスを提供している外資系企業「セールスフォース・ドットコム」は、2015年に白浜町にサテライトオフィス「Salesforce Village」を設置。社員が移住して電話やメールでの営業業務を行っています。
2018年 三菱地所
「三菱地所」が「白浜町第2ITビジネスオフィス」の一画に「南紀白浜ワーケーションオフィス」を開設。三菱地所のテナント企業を対象とし、ワーケーションやハッカソン合宿などを提供していく予定です。
和歌山県におけるワーケーションの取り組みについては、こちらの記事もご覧ください。
事例3.沖縄県竹富町
沖縄県の八重山諸島に位置する竹富町。人口は4,323人(平成31年1月末)で、主な産業は農業と観光業です。西表島や竹富島など8つの有人島で構成されているのが大きな特徴となっています。
https://www.town.taketomi.lg.jp/
ふるさとテレワークに取り組む背景
竹富町は離島という厳しい生活環境にあり、子供たちの多くは成長すると島を出てしまいます。一方、西表島は全国の若者たちを魅了し、昔から移住を試みる者が絶えないので人口は増加傾向にあります。しかし、農業と観光業に頼る竹富町では、収入が不安定なことが課題でした。
ふるさとテレワークの取り組み
竹富町では、平成27年度「ふるさとテレワーク推進のための地域実証事業」に参加し、ふるさとテレワークへの取り組みを始めています。
住民が個人事業主として企業から仕事を受注する「自営型」のふるさとテレワークを推進。移住者が農業や観光業に携わりながら、副業でテレワークに取り組むというスタイルです。
シェアオフィス
西表島にシェアオフィス「ぱいぬしまシェア 」を設置。地元ワーカー育成や仕事場として利用されています。
2015年 在宅コールセンターオペレーター育成
移住者など約10名が参加し、コールセンターのオペレーターを育成する実証事業を行いました。
2016年 Webデザイン講座
8つの離島で構成されているという特殊な地理的条件のため、オンラインによるWebデザイン講座を実施。遠隔会議システムを導入し、参加者は各家庭のパソコンから講座を受講しました。
2017年 ライティング講座
竹富町と「クラウドワークス」の協同により、オンライン・ライティング講座を実施。その後、竹富町のテレワーク業務委託先である「ブルー・オーシャン沖縄」がとりまとめ役となり、ライティング案件を受注しています。
ワーケーション
豊富な観光資源を持つ竹富町では、ワーケーションにも取り組んでいます。2018年には東京と仙台の企業を誘致し、ワーケーション体験を実施しました。
事例4.岩手県大船渡市
大船渡市は岩手県南東部の太平洋に面する港町です。人口は36,537人(平成31年1月末)で、水産業や木工業が主な産業です。
ふるさとテレワークに取り組む背景
大船渡市では、高校卒業後に約9割が市外に出てしまうという課題がありました。そのため、地元に残って遠隔で仕事ができる環境を構築することを目的に、ふるさとテレワークに取り組むようになりました。
ふるさとテレワークの取り組み
大船渡市は、平成27年度「ふるさとテレワーク推進のための地域実証事業」にNTTコミュニケーションズと提携して参加。「大船渡テレワークセンター」を設置して、サテライトオフィスを誘致する「雇用型」と、地元ワーカーによる「自営型」の両方に取り組んでいます。
雇用型
「富士ソフト」が大船渡テレワークセンター内にサテライトオフィスを開設。「ギークハウスプロジェクト」の実証を行いながら、地元との交流を模索しています。
自営型
大船渡テレワークセンターのコワーキングスペースを利用して、女性を中心に地元ワーカーを育成。東京の会社から人工知能の学習オペレーションを受託しています。
事例5.長野県塩尻市
塩尻市は、長野県の中央、松本盆地の南端に位置しています。人口は66,832人(平成31年1月末)で、農業やワイン醸造のほか、「セイコーエプソン 」などが立地しています。
http://www.city.shiojiri.lg.jp/gyosei/tokei/setaisu/jinkosetaisuu.html
ふるさとテレワークに取り組む背景
平成21年度から在宅就業支援事業「KADO(かどう)」を実施。その下地を活かして実証事業に参加しています。
ふるさとテレワークの取り組み
平成27年度「ふるさとテレワーク推進のための地域実証事業」に長野県及び富士見町、王滝村とともに参加。次いで、平成28年度「ふるさとテレワーク推進事業」に松本市と共同で参加しています。
自治体単独でなく、周辺の自治体と協同でふるさとテレワークに取り組んでいるのが大きな特徴です。「長野県中信地域ふるさとテレワーク推進コンソーシアム」を設立し、「テレワークセンターしおじり」(塩尻市)、「Colabo」(塩尻市)、「Knower(s) 」(松本市)の3拠点をネットワークでつなぎ業務を分担しています。
サテライトオフィス
都市部から誘致した企業のサテライトオフィスでは、それぞれの個室で社員が業務を行っています。
テレワークセンター
受注した仕事を、管理スタッフがスキルに応じてワーカーにアサイン。ワーカーはセンターや自宅で業務を行います。
まとめ
各自治体により、立地条件や観光資源を活用したさまざまなタイプのテレワークが実証されています。「雇用型」と「自営型」でどちらに重きを置いていくかなど、先行事例をしっかり検証することがテレワーク成功の秘訣となるでしょう。