ふるさとテレワークを実現するためには?事例・制度の紹介

近年、サテライトオフィスなどを立ち上げて、地方で都市圏の仕事をする「ふるさとテレワーク」が注目を集めています。

ふるさとテレワークを導入することで、自治体は労働力人口を確保でき、企業は人材確保・リスク分散などのメリットがあります。

この記事では、実際に企業がサテライトオフィスを試験導入した事例と、自治体・企業が利用できる「おためしサテライトオフィス」制度ついてご紹介します。

ふるさとテレワークとは?

ふるさとテレワークとは、地方のサテライトオフィス等においてテレワークにより都市部の仕事を行う働き方のことです。

これまで、地方自治体における地域活性化の施策は地元産業の創生や企業誘致が主でした。しかし、クラウドサービスなどのICT技術の発達により、テレワークの活用によって個人単位から都市部から地方へ誘致することが可能となりました。ふるさとテレワークについてさらに知りたい方はこちらの記事もご覧ください。

【クイックガイド】ふるさとテレワークとは?

ポップインサイト@北海道紋別市の事例

ここでは、北海道紋別市にサテライトオフィスを試験導入した株式会社ポップインサイト(本社:神奈川県横浜市)の事例についてご紹介します。

実際にサテライトオフィスを試験導入したことでわかった、ふるさとテレワークの魅力とは、何でしょうか?

社員全員がフルリモートワーク

ポップインサイトは「ユーザー視点を間近にすることでコミュニケーションバグをなくし価値が正しく伝わる社会を実現する」をモットーに、アプリやwebシステムのUXリサーチ・改善提案をメイン事業としている会社です。

ポップインサイトは立ち上げから3年で社員のリモートワークを開始し、現在では役員、パート・アルバイトを含む合計55人が北は北海道、南は四国、さらには海外(フランス)でリモートワーク(在宅勤務)で仕事をしています。オフィスに在席しているのは常時3人ほどだけだそうです。

きっかけはリモートワークの総本山?

そんな全国に社員がいるポップインサイトが、紋別市にサテライトオフィスを設置するきっかけとなったのは、徳島県神山町での社員合宿だったそうです。徳島県神山町といえば、Sansan株式会社などのIT系企業のサテライトオフィスが集結する、いわばリモートワークの総本山です。

ポップインサイトでは、同町のコワーキングスペースである神山バレー・コンプレックスで営業チーム全8名(現地参加6名・リモート参加2名:東京1名、北海道1名)で合宿を行った結果、これが参加者に大好評。

神山町での合宿が大成功に終わったことで、自社で自然豊かな場所にサテライトオフィスを持つことに前向きになったとのことです。

北海道紋別市へ

紋別市

ポップインサイト  紋別サテライトオフィス通信

そして色々な場所を検討した結果、2019年9月、ポップインサイトは北海道紋別市にサテライトオフィスを1ヶ月期間限定で開設することに決めます。

紋別市は、オホーツク海に面した漁業の町です。紋別市では、星槎道都大学 旧紋別キャンパスの利活用として企業誘致を目指していますが、ポップインサイトはこちらをサテライトオフィスとして利用しています。また、同社では現在、地域との交流を目的として市内にある芸術館のフリースペースをコワーキングスペースとして利用しています(参考:紋別市の穴場的コワーキングスペース?!)。

ポップインサイトの広報担当の方によると、紋別市の魅力は豊かな自然環境と、人々のホスピタリティにあると言います。また、コテージやキャンプ場もあるため、ワーケーション的な利用の可能性もあるそうです。

在宅勤務→サテライトオフィス勤務にしてみて

コワーキングスペース@紋別まちなか芸術館

実は、ポップインサイトには元々紋別市で働いていた社員がいます。元々はフルタイムリモートワーカーとして採用され、これまで在宅勤務をしていたそうですが、サテライトオフィスやコワーキングスペースで勤務するようになってからは次のような嬉しい変化があったそうです。

  • 通勤(車で10分)が発生することで、気分転換ができてよい
  • (コワーキングスペースでは)社外の人とコーヒーを一緒に飲むなどのコミュニケーションが発生。もともと寂しいと感じていたわけではないが、人とのコミュニケーションが発生すると嬉しい
  • ミーティングの時・集中したいときは在宅で、アイデアが欲しいときはコワーキングスペースで、と選択肢が増えた

在宅勤務で孤独を感じたり、働きすぎてしまったりすることはテレワークのデメリットとしてよく挙げられますが、サテライトオフィス・コワーキングスペースを利用することで心身共にリフレッシュできるのは、素晴らしいですね。

今後はU・Iターンで地元と協力

勤務する社員の評判も上々とのことで、ポップインサイトは紋別市でのおためしテレワークをしばらく続行予定だそうです。今後は、自治体との連携を増やしてU・Iターンで人の呼び込みなどに協力していきたいとのことです。

漁業の町・紋別市はほたてやカニなどの海産物を楽しめるなどワーケーション先としての魅力もあります。紋別市でのテレワークに興味のある方は、紋別市企業誘致担当まで是非お問い合わせください。

サテライトオフィス試験導入の際に利用できる制度

さて、地方におけるサテライトオフィスの試験導入の際に、是非検討していただきたい制度が総務省による「おためしサテライトオフィス」制度です。

おためしサテライトオフィスのポータルサイト

これは、サテライトオフィスの導入を検討する三大都市圏(埼玉県、千葉県、東京都、神奈川県、岐阜県、 愛知県、京都府、大阪府、兵庫県、奈良県)に本社がある企業が3日以上の試験導入をする際に、受け入れ自治体が利用することができる制度です。具体的には、1)都市部の企業等のお試し勤務の誘引に要する経費、2)お試し勤務環境の用意に要する経費、3)お試し勤務期間中の活動に要する経費について受け入れ自治体が特別交付税措置を受けることができます。例えば、お試し勤務オフィスの賃料・ 通信費 ・ 光熱水費 ・ お試し勤務を行う都市部の企業等の交通費などが対象となります。

制度を担当する総務省 地域力創造グループ 地域自立応援課によると、この制度は現時点(2019年11月)では2019年度いっぱいまで利用が可能です。制度を利用する際は、まずポータルサイトに自治体の登録が必要となります。ポータルサイトの連絡先に問い合わせてみてください。

まとめ

今回の記事では、ふるさとテレワークの試験導入についての事例と、その際に利用できる「おためしサテライトオフィス」制度についてご紹介しました。

サテライトオフィスを持つことにより、その場で働く人にとっては気分転換や集中力アップにつながり、また、企業のワーケーション先としての利用も考えられます。興味のある方は是非、おためしサテライトオフィスをご検討ください。