シゴトバでは、総務省の「テレワーク先駆者百選」に認定された企業の方をゲストにお招きし、オンラインインタビュー形式のイベントを行っています。
今回は、テレワーク先駆者百選選出企業のサイボウズ株式会社コーポレートブランディング部の深澤 修一郎様をお招きしました。テーマは「出社率10%で本当に仕事が回るのか?サイボウズのテレワーク事情を徹底解説」です。
コロナ禍で大きな注目を集めている「テレワーク」は、アフターコロナの世界でも、人材確保や事業継続に欠かせない働き方となるでしょう。そのテレワークで業務の生産性を下げず、オフィスワークと同等かそれ以上の環境を構築するための工夫について、サイボウズの具体的な取り組みとともに解説していきます。
Contents
テレワーク先駆者百選とは
「テレワーク先駆者百選」とは、総務省が主催するテレワークの導入・活用を進めている企業・団体を「テレワーク先駆者」として選出し、その中でも十分な実績を持つ企業・団体を「テレワーク先駆者百選」として公表する取組です。サイボウズ株式会社はリモートワークの取り組みが評価され、テレワーク先駆者百選に選出されています。
サイボウズは世界で累計1,000万人のユーザーを抱えるクラウド業務アプリプラットフォーム「kintone」や、中小企業向けグループウェア「サイボウズOffice」の開発・運用を手掛ける会社です。10年以上にわたってテレワークに取り組んできた実績があり、同社の東京オフィスの出社率は10%という驚異的な数値を打ち出しています。
出社率10%を実現したサイボウズの事例
サイボウズが出社率10%で仕事を回せている秘密は、「オフィスのオンライン化」にあります。
そもそも、なぜ従来はオフィスワークで仕事が回せていたのかを考えると、以下のような利点があったからにほかなりません。
- 周りの状況が良く分かるから
- 気軽に相談できるから
- 情報にアクセスしやすいから
サイボウズはこれらオフィスワークの利点をオンラインに持ち込んだことによって、出社率10%=テレワーク率90%を実現しています。
ここでは、「オフィスのオンライン化」で陥りやすい失敗と、サイボウズの具体的な取り組みについて比較しながら解説していきます。
テレワークでも「周りの状況が良く分かる」には
サイボウズでは、テレワークでもオフィスワークのように「周りの状況が良く分かる」ように、以下の取り組みを実施しています。
- グループウェア:オープンスペースであらゆる情報を全員に共有
- 情報スレッド:社内のさまざまなプロジェクトの情報を公開
- 分報:SNSに投稿するように時間ごとの活動報告をつぶやき、リプライも可能
- 雑談スレッド:子育てや育児などプライベートなテーマの雑談も自由に話せる
一般的なテレワークでは、社内の情報共有ツールとしてEメールやWeb会議ツールが利用されます。
しかし、メールでは宛先にしか情報共有がされず、またWeb会議も招待されなければ参加できません。そのため、結果的に周りの状況が良くわからず、孤立化の原因になりがちです。
サイボウズではグループウェア「kintone」で全員をつなげ、オープンスペースを構築しています。そこではスケジュールやタスク、日報(分報)などあらゆる情報が全員で共有可能です。
テレワークでも「気軽に相談できる」には
サイボウズでは、テレワークでもオフィスワークのように「気軽に相談できる」よう、以下の取り組みを実施しています。
- 相談:kintoneで相談内容を管理するデータベースを作り、だれでも相談・コメントできるようにする
- 質問:オープンな場でだれでも質問や回答を投稿できるスレッドを作成
テレワーク中の社内の情報共有ツールがEメールしかない場合、だれかに何か相談をしたいときでも、メールの宛先の人としか共有できません。他の人と共有する必要が出てきた場合は、同じ内容をコピペしたり、何度も説明したりする必要があります。メールボックスも他の連絡事項や相談事項が混同して非常に不便です。
サイボウズではだれでも気軽に相談・回答、または過去の相談にも遡れるように、相談内容を管理するデータベースをkintoneで作成しています。
また気軽な質問に関しては、「ヤフー知恵袋」や「発言小町」の社内版のような質問スレッドを作成し、オープンな場でだれでも質問を投稿できるようにしています。
テレワークでも「情報にアクセスしやすくする」には
サイボウズでは、テレワークでもオフィスワークのように「情報にアクセスしやすくする」ように、以下の取り組みを実施しています。
- グループウェア:経営会議、社長のスケジュール、経費等もすべてkintone上で情報共有
- 社内情報の全体検索システム:グループウェア上の社内情報は全体検索ですぐ探せるようにする
書類や資料の電子化が進んでいない会社が、オフィスワークからテレワークに移行すると、紙媒体の情報を自宅まで持ち帰る必要があります。またメールやスケジュール管理などの社内システムがグループウェア化されていないと、必要なときに探す手間がかかってしまって非効率です。
サイボウズでは紙の情報も社内システムもすべてkintoneに集約し、欲しい情報にアクセスするには「ここだけ開けばOK」という状況を作り出しています。
オフィスのオンライン化は何から始めれば良いか?
初めてテレワークを導入する会社が、「オフィスのオンライン化」をするには何から始めれば良いのでしょうか?サイボウズでは以下の3つを挙げています。
- 紙業務のデジタル化
- 1対1の閉じたやりとりを減らす
- 小さく始める:興味がある人や一部署だけから始める
電子化されていない紙の情報がある場合は、テレワーク中でも出社しなければならないため、デジタル化は最優先で取り組みます。情報のデジタル化が完了したら、続いて社内のコミュニケーションにオープンなツールを使い、色んな人が見える中でやりとりをしましょう。
さらに、オフィスのオンライン化は興味がある人や一部署だけに限定して、小さく始めることが大切です。小さく始めた活動が成功すれば、徐々に社内に広がっていって、最終的に全社を挙げて取り組めるようになるでしょう。
テレワーク時のメンタルヘルス対策
テレワークを導入した会社に共通する課題の1つに、メンバーの「メンタルヘルス対策」が挙げられます。サイボウズのメンタルヘルス対策の具体的な取り組みは、以下のとおりです。
- 相談窓口の設置
- 定期的なサーベイ(メンタルヘルスチェック等)を実施
- 働く環境とオープンなコミュニケーション
サイボウズでは、雑談スレッドや相談データベースなど社内および社外に相談窓口を設置しています。さらに、社員のメンタルヘルスをチェックする定期的なサーベイも具体的な取り組みの1つです。サーベイでケアが必要な社員が見つかれば、上司による面談などで対策を講じています。
まとめ
サイボウズ株式会社コーポレートブランディング部の深澤 修一郎様をお招きして、オフィスワークの良さをオンラインで再現するための具体的な取り組みをお伺いしました。
従来のオフィスワークは「とりあえず会社に行けばOK」でした。テレワークでは「とりあえずこのグループウェアを見ればOK」を実現することで、生産性を低下させることなく業務を継続していくことができるでしょう。
また、サイボウズではテレワークセミナーを行っており、テレワークのノウハウを部署別に公開しています。
https://event.cybozuconf.com/-/telework
テレワーク導入を検討されている企業の担当者の方、またチームのマネージャーや代表者の立場にいる方は、今回の記事で紹介した具体的な方法やサイボウズが公開しているノウハウを参考に、自社や各部署に対策を講じていただければ幸いです。