テレワークだと労務管理が難しい?4つの問題点

新しい働き方として、会社のオフィス以外で働くテレワークに注目が集まっています。日本でも10年ほど前からテレワークを導入する企業が増えていますが、いまだに企業のテレワーク実施は16%にとどまっている状況です。

テレワーク導入を控えている企業の多くは、どのような課題を抱えているのでしょうか。今回は「労務管理」にフォーカスして、その問題点を洗い出してみましょう。

テレワークにおける労務管理4つの問題点

ここでは、次の4つの問題点についてそれぞれ解説していきます。

勤怠管理が難しい

テレワークの導入を控える企業の多くが、「テレワークを導入したら社員がさぼるのではないか」という自宅等で仕事を行う社員の自律性に不安を抱えています。また、テレワークを導入する企業の多くは同時にフレックス勤務も導入しているため、「極端な夜型になるなど、オフィスにいる人と働く時間がずれてしまう」という懸念もあるようです。

オフィス内であれば、上司が部下の勤務態度を目や耳で確認することができますが、テレワークでは姿を直接見ることができないため、部下のマネジメントを行うのが難しいというイメージがあるようです。

ザイマックス総研の調査によると、テレワーク経験者が感じたデメリットの中でもっとも多かった意見が「仕事のON/OFFの切り替えがしづらい」でした。社員の自律性についてはテレワークを導入する前に検討しておくべき課題と言えます。

テレワークを導入した企業の中には、労務管理やセキュリティ対策の目的で、自宅で働く社員の様子をカメラで記録するシステムを導入しているところもあります。

社員の怠慢を抑制する効果が期待されますが、一方でカメラで記録されている方からすれば監視されているような気持ちになります。すると、心理的なプレッシャーからこの後にご紹介する「長時間労働になる」といった新たな問題も発生します。

おすすめなのは、各種コミュニケーションツールで利用可能な「プレゼンス機能」です。簡単に言うと、人の離席・在席を他の人が知ることのできる機能です。ツールによって、「写真を使うもの」「アバターを使うもの」「オンラインかどうか検知するもの」など様々な機能があります。

おすすめのツールとその特徴など、こちらのページでまとめているので参考にしてみてください。

テレワークにおけるコミュニケーション課題解決には「プレゼンス機能」が有効。ツール7選

長時間労働になりがち

テレワークを導入する企業では、9時から18時まで会社に拘束される働き方ではなく、フレックス勤務や裁量労働制など働く時間を社員が自由に決められるような制度を取り入れことが多いようです。

一般的には、テレワークを導入すれば「社員の労働時間が短くなる」「より効率的な働き方ができる」とイメージされていますが、一方、先ほどのザイマックス総研の調査では、「長時間労働になる」という問題点も指摘されています。

自宅で仕事し、かつ勤務時間が自分にゆだねられていると、先ほども紹介したように中々仕事のON/OFFをつけづらくなります。特に家事や雑事をしながらテレワークで働く社員は、労働が深夜に及んだり夜型になったりしがちです。

テレワーク導入を検討している会社は、「仕事のON/OFFの切り替えがしづらい」と「長時間労働になる」について、管理方法についてのルール策定や勤怠管理ツールの導入を検討する必要があります。

業務評価が難しい

テレワークを導入することにより、社員は上司や他の同僚の目が届かない場所で働くことになります。

対面によるコミュニケーションが少ないため、部下の業務プロセスを直接確認することができません。見えないところで働く部下をマネジメントし、業務評価を行うことに難しさを感じてしまうようです。

日本企業の多くは業務プロセスを重視する評価制度を採用しており、業務の結果だけでなく、どのようなプロセスを経て業務を成し遂げたかを重視する傾向にあります。

 

「何を成し遂げたか」ではなく、「どう頑張ったか」を重視するプロセス評価型の人事評価には柔軟性がありますが、テレワークを導入すれば部下は上司から物理的に離れて業務を遂行するため、従来のプロセス評価型の評価制度では対応できなくなってしまいます。

逆に、結果評価型の人事評価を行っている企業ではテレワークをスムーズに導入しやすいといえるでしょう。

しかし、人事評価制度の方向転換は企業のポリシーに準じるものですから、これをいきなり変えることは組織に混乱をもたらします。プロセス評価型の企業では、オフィスで働く社員・テレワークで働く社員が互いのプロセスを把握しやすいよう、双方のコミュニケーションを促進することも重要です。

 

労災認定が難しい

「在宅勤務での病気や怪我でも労災保険は適用されるか」については、テレワーク導入を推し進める企業担当者の気になるところではないでしょうか。

先ほども触れたように、リモートワークは長時間労働を余儀なくされるケースも少なくありません。働きすぎてしまうことにより、社員の病気や怪我のリスクも大きくなります。

たとえば、リモートワークの従業場所を定めていない場合、社員が自宅以外のカフェやファミリーレストラン、コワーキングスペースなどで業務を行うケースがあります。

在宅勤務中に業務起因性のある疾病やゲガは労災の対象となりますが、自宅以外の場所で仕事をしていたのか、それとも休憩していたのか、仕事とプライベートとの区別が難しい場合は、原則労災の対象になりません。

したがって、リモートワーク導入の際には、業務時間の設定や記録方法、報告義務など、業務状況の管理体制を明確にしておく必要があります。

まとめ

今回の記事では、テレワーク導入に際して多くの企業に立ちはだかる課題について特に労務管理の問題を4点ご紹介しました。

ご紹介した問題点はあくまでも一般的な課題で、企業の業種や体質、社員数などの要素でさまざまな課題が考えられます。

厚生労働省・国土交通省などがテレワーク導入における労務管理のルールづくりなどをまとめていますので、ぜひ参考にしてみてください。

【導入担当者向け】人事・労務に関するガイドラインまとめ

参考