先日、第19回テレワーク推進賞の表彰式が行われました。こちらの記事では、どのような企業がどのような点を評価されて表彰されたのか、ご紹介します。
Contents
テレワーク推進賞とは?
一般社団法人日本テレワーク協会が主催するテレワークの普及促進を目的とした章です。平成12年度に開始され、今年度で19回目となります。
主催者である日本テレワーク協会のほかには総務省、厚生労働省、経済産業省、国土交通省、東京商工会議所、公益財団法人日本生産性本部、日本テレワーク学会、フジサンケイ ビジネスアイが後援しています。
第19回テレワーク推進賞
概要
日時: 2019年2月21日 13:00~16:30
会場: 京王プラザホテル 42階 富士の間
テーマ:「本気です。テレワークが当たり前になる社会へ」
どんな企業・団体が応募しているのか?
今年度は44団体からの応募があり、13団体が受賞しました。
表彰式ではテレワーク協会、総務省、審査委員長の総評が紹介されましたが、今年のテレワーク推進賞の特徴として、「非IT系企業」「テレワーク=経営戦略」という点が挙げられました。
昨年度までは、IT系職種の応募が多かったようですが、今年はほとんどが非IT系企業からの応募だったようです。実際、会長賞を受賞した2団体は非IT企業です。
また、以前は子育てや介護を対象とした福利厚生目的でテレワークを導入していたのが、現在は全社員を対象とした経営戦略、人材確保へと移行してきているという点が今年度の特徴です。
第19回テレワーク推進賞 受賞団体
今回受賞した13団体のうち、表彰式で事例発表があった8団体について各団体の取り組みをご紹介します。
会長賞:サントリーホールディングス株式会社
会長賞は、1企業・1団体に授与されますが、企業としては、サントリーホールディングスが会長賞を受賞しました。
サントリーホールディングスサントリーは、テレワークのための制度の改定やインフラの整備を行ったこと、実情に注目して業務を見直しPDCAをまわし利用者目線で柔軟に改善を続けたことにより、多くの社員が制度を利用していることが評価されました。
- 制度・取り組み
- 朝6時から夜10時の間でいつでもどこでも働ける
- 1週間のうち半分出社すればよい
- テレワークをする時間は10分単位で決めることができる
- テレワークインフラ
- テレワーク利用状況が勤務簿に自動で反映される
- クラウド型Web会議システムBlueJeasの導入
- 結果
- 対象者の80%以上(5000名ほど)が利用
会長賞:愛媛県西条市
団体としては、愛媛県西条市が会長賞を受賞しました。
愛媛県西条市は、小中学校の教職員にテレワークを導入した点が評価されました。小中学校の教職員というと、個人情報が多く持ち帰り作業がしづらいイメージですが、西条市ではセキュリティ対策を強化することでテレワークを可能にしました。
忙しい職業のひとつとされる教職員のワークライフバランスの確保の取り組みが評価されたこと、また、他団体の教職員の啓発・模範となってほしいという期待から会長賞の受賞となりました。
- 制度・取り組み
- 校務情報やデジタル教科書のほとんどをパブリッククラウドにアップ
- テレワークインフラ
- セキュリティ性の高い仮想デスクトップでネットワークを強靭化
- クラウドサービスMicrosoft Azureによる認証強化
- 結果
- 時短の効果や、土日出勤が減った。
- 利用者は60%(500名ほど)
- 満足度は80%以上
優秀賞
優秀賞は5つの企業に授与されました。テレワークを自社で導入し実践する企業が対象となる「テレワーク実践部門」と、世の中のテレワークの普及促進に寄与する企業が対象となる「テレワーク促進部門」の2つがあります。
【テレワーク実践部門】エヌ・ティ・ティコミュニケーションズ株式会社
エヌ・ティ・ティコミュニケーションズでは、労使一体の取り組みとしてテレワークが導入されました。2017年に在宅勤務制度の利用条件を撤廃し、対象を全社員に拡大したところ在宅勤務者が4倍以上に増加した実績が評価されました。
- 制度・取り組み
- ZXY(ジザイ)やBigEchoを利用した社外ワークスペースの整備
- フレックス勤務と在宅勤務の組み合わせが可能
- テレワークインフラ
- ビデオ会議ツール:Cisco Webex、Arcstar Conferencing
- チャットツール:Ucass
- グループウェア:G suite
- PCログを勤務管理システムに自動で反映
- 状況
- 労働時間の削減、生産性に関する満足度が向上
【テレワーク実践部門】大同生命保険株式会社
大同生命保険株式会社では、タブレットやPCを従業員に配布し、従業員が場所を選ばず働くためのテレワークインフラの整備を行いました。営業職のモバイルワークだけではなく、本社職員の在宅勤務・サテライトオフィス勤務など全社的に取り組んでいる点、金融業界というテレワークが難しいとされる業界においてテレワークを実践している点が評価されました。
- 制度・取り組み
- 男性の育児休業取得100%(ほぼ強制)
- テレワークインフラ
- タブレット端末を全営業に配布
- 古いPCを在宅勤務用に配布
- シンクライアントを導入
- 神戸にサテライトオフィス設置
- 結果
- 15%(180名)程度の利用
【テレワーク実践部門】株式会社FIXER
クラウドサービスを行う株式会社FIXERでは、企業の多拠点化に伴ってテレワークインフラを整備するとともに、社内メールを原則禁止するなどしてテレワークをしやすい環境を作っています。地方拠点での人材の雇用・育成により、東京の仕事を受注実績がある点、また、雇用人数も拡大している点が評価されました。
- 制度・取り組み
- 三重拠点の開設
- 社内メール原則禁止
- 仕事以外の部活動などでビデオ会議を使用
- クラウドソーシング Upwork利用して海外の人材確保
- テレワークインフラ
- テレビ会議ツール CVC(Cloud Video Conference)(自社プロダクト)、Skype
- Slack, Teams利用、全社員がみえる透明性
【テレワーク実践部門】ユニリーバ・ジャパン・ホールディングス株式会社
働きやすい会社として人気のユニリーバ・ジャパンでは、2016年からWAAと呼ばれる制度を導入しています。これは、Work from Anywhere and Anytimeの略で、社員が働く場所・時間を自由に選ぶことをできる制度です。売上成長を継続しながら、社員の生活面向上、生産性向上、労働時間の現象を達成している点が評価されました。
- 制度・取り組み
- WAA(Work from Anywhere and Anytime)を導入
- 課題解決ではなく「より生き生きと健康的に」のビジョンからスタート
- 理由を問わず会社以外の場所で勤務できる。
- 平日6時から21時の間で自由に勤務時間休憩時間を決められる(期間・日数制限なし)
- 残業上限 月45時間目標
- 工場及び営業の一部を除く全社員が対象
- 副業認めている
- 制度だけでなくマインドセットを変革
- 仕事の明確化
- 仕事をやらない心配ではなく信頼
- すべての自治体にコワーキングスペースを目指している
- テレワークインフラ
- ビデオ会議、チャット、ファイル共有ツールの整備
- 結果
- 90%以上が経験 平均30%生産性アップ 残業時間15%減 ワークライフバランス向上67%
【テレワーク促進部門】株式会社ザイマックス
サテライトオフィス ZXY(ジザイ:旧ちょくちょく)を運営する株式会社ザイマックスはテレワーク促進部門で受賞です。
昔の名前「ちょくちょく」の方がなじみのある方もいらっしゃるかもしれませんが、ZXYは現在(受賞時)首都圏を中心に42拠点を営業、約800社13万人の会員を持つサテライトオフィス大手です。キッズスペース付きのサテライトオフィスや、テレワーク推進イベントの開催など幅広くテレワークの普及・促進に貢献しています。
- 企業向けサテライトオフィスZXY(ジザイ)を提供
- 防音完全個室、半個室ブース、オープンスペース提供
- 首都圏42拠点開設、2019年にはに50、2020年にはに100拠点の予定
- テレワーク推進の自社イベント開催
- サービス利用企業へのフォロー 効果測定アンケート、他社事例の紹介
- キッズスペース付サテライトオフィスの展開 現在9拠点2019、15拠点目標
- サテライトオフィス利用者のリアルタイム勤怠管理情報提供
- 契約企業数800社 会員数13万人(昨年から3倍増加)
中小企業テレワークチャレンジ特別奨励賞
最後に、中小企業枠としてはリモートワークツール「Remotty」を開発した株式会社ソニックガーデンが特別奨励賞を受賞しています。
ソニックガーデンは北海道から九州まで全社員リモートワークをしていることが特徴の、ソフトウェア開発企業です。自社開発のリモートワークツールであるRemottyを実際に自分たちでも利用しており、普段のコミュニケーションから雑談まですべてリモートで行っているようです。入社式・納会・飲み会までもがビデオ会議という、今回ご紹介した中では最もリモート度の高い企業といえるでしょう。
まとめ
この記事では、第19回テレワーク推進賞受賞企業・団体についてご紹介しました。各社様々な取り組みを行い、結果テレワークが利活用されたことが評価されていることがお分かりいただけたでしょうか。
サントリーホールディングズ、エヌ・ティ・ティコミュニケーションズ、ユニリーバなどの利用者の満足度が高い企業では、テレワークの対象が(ほぼ)育児や介護を必要とする社員に限定されず、全社員となっている点が特徴です。これは、今回のテレワーク推進賞のテーマ「本気です。テレワークが当たり前になる社会へ」が各社に浸透しつつあることのあらわれといえるでしょう。
シゴトバでは、今後も日本のテレワークの動向に着目して情報をお届けします。