テレワークにおいてテキストチャットツール(以下、チャットツール)はコミュニケーションの活性化をサポートする重要なツールです。
2019年現在、様々なチャットツールが登場しており、それぞれ単なる業務連絡や思いついたアイディアの共有、議論、そして雑談を効率良くできるような様々な工夫がされています。この記事では、様々なチャットツールの機能や特徴について、テレワークにおいてチャットツールを選ぶ際のポイントをご紹介します。また、現在ビジネス利用で人気のある3つのチャットツール(Slack、Skype、Messenger)についてご紹介します。
各チャットツールのコンセプトを知ることで、どのようなチャットツールが自社のテレワーク環境に合うか、参考にしてください。
テキストチャットツールにはビデオ会議機能を備えたものが多いですが、ビデオ会議ツールについてはこちらの記事をご参照ください。
テレワークとは
テレワークとは、時間や場所にとらわれない働き方のことです。リモートワークという言い方をする企業・団体もあります。
情報通信技術(ICT : Internet Communication Technology)の発展によりインターネットを介して地理的に遠くの人と働くことが可能になり、オフィスの外(自宅やカフェ、サテライトオフィスなど)で働いたり、国外の仲間と働いたり、従来の働き方と違う様々な就業形態が可能になりつつあります。
テレワークツールの選び方
また、テレワークツールの料金体型など、ツールの導入に関するTipsについて知りたい方はこちらのページをご覧ください。
チャット、メール、どちらを使うべきか
私生活においてはLINEなどのチャットツールは幅広い年齢層に広がりを見せ、多くの人が利用しています。
しかし、ビジネス(特に非IT業界)においては文字のコミュニケーションは未だメールが主流。
チャットツールを導入していない企業も多く存在します。チャット、メールそれぞれに長所・短所がありますので、どちらも上手に利用することを考えましょう。
メールのメリット=エビデンスになる
深い議論や反証をするなどのやり取りには、長文のメッセージでやり取りをするメールが向いています。
トピックごとにタイトルが付加されており検索性に優れ、また、最終的な決定事項のエビデンス(証拠)として履歴を残しやすいことから、チャットツールを導入している企業でもメールを併用するケースがほとんどです。
また、あまり近しい相手でない場合でもメッセージを送りやすい点という利点もあります。一方、頻繁なコミュニケーションをしづらい点がデメリットです。
チャット=議論を活発化できる
チャットツールは短文のメッセージでも気軽に相手へ送信することが可能で、受信相手は手の空いたときに返信することができます。
そのため、頻繁なコミュニケーションが発生し議論が活発になると言われており、コミュニケーションが希薄化すると言われるテレワーク環境において会話を誘発する重要なツールとなっています。
一方で複数のトピックに跨った内容を一つのグループ(ツールによってはチャンネル、ルームと呼ぶ場合もある)でやり取りすると、内容が混ざってわかりづらくなったり、コミュニケーションが活発すぎる場合にはメッセージが流れて見落としてしまうという面があります。
テレワークではビジネス向けチャットツールを使おう
テレワークにおいてチャットツールは重要ですが、どのチャットツールを使ってもテレワークの環境の最適化が図れるわけではありません。
そもそも、いくつかのツールはビジネス向けに設計されておらず、会社組織として運用するには不十分なものも多々あるので注意が必要です。
チャットツールは大きく「一般ユーザ向け」と「ビジネス向け」のツールに分けられます。普段私たちがよく使うSkypeやLINEは一般ユーザ向けに設計されています。
ただし、一般ユーザ向けで有名なチャットツールはビジネス向けのバージョンも用意している場合があるので確認してみると良いでしょう。例えば、一般ユーザ向けのSkypeはビジネス向けにSkype for Business、一般向けのLINEはビジネス向けにLINE Worksをリリースしておりそれぞれビジネス用途に特化した機能が追加されています。
一方、医療関係や安全保障関係などのセキュリティの厳しい業界では、この記事でご紹介するような一般的なチャットツールを使用することができない場合もあります。その場合は、「Slackが使えない?!そんなとき代わりに使えるオンプレミスのチャットツール2選」を参考にしてください。
導入前に確認すべきチャットツールの機能
チャットツールをどのように使うかは企業によって異なります。ただ、企業にとってユーザ(社員)を管理しやすく、ユーザ(社員)自身が使いやすいツールを選ぶためには以下のような機能に関して確認しておくと良いでしょう。
ステータス機能
ユーザの状態(プレゼンス)を設定でき、同僚や上司と共有する機能です。この機能により誰が仕事中か、誰が取り込み中(ミーティング等)であるかなど状態の把握をすることができるため、チャットを始める・電話をかける前に相手の状況がある程度わかり、効率よく相手とコミュニケーションを開始できます。この機能はオフィスで働く場合でも席を立たずに相手の状態を確認できるため非常に有用ですが、他に状態を確認する術のないテレワークにおいてはより有用です。
チャットツールによっては30分など決まった時間PCの操作がない場合には状態が自動的に「一時退席中」に変わるものがあり、PCがただ起動しているだけか実際に作業者がいるかを確認することができます。離席の際に状態変更をし忘れても正しい状態が表示されるため非常に便利です。また、この機能の特性を用いて勤怠管理(仕事をしているかの確認)の参考に使う企業もあります。
権限管理機能
数多くの、また異なる立場のユーザが使うチャットツールは、セキュリティ維持のため各個人がどのような情報にアクセスできてどのような設定を変更できるかといった権限の管理をする必要があります。全社的に守らせたいルール、例えば社外の人とのチャットを禁止するという内容はトップレベルの管理者が設定し、各プロジェクトのメンバー管理や情報管理はプロジェクト管理者、そのほか細かい設定はユーザに権限を分けることで効率的な運用が可能となります。ビジネス向けのツールでない場合このような機能がなかったり、ビジネス向けのツールであっても自社の管理体制に合わない設定しかできない場合もありますので予め確認が必要です。
トピック単位でのグループ(チャンネル、ルーム)設定
メールでは1件1件にタイトルがつくため話題が何か明らかです。また、近年では同じタイトルのメールを連結表示することで話の流れを追いやすく設計したツールも多く使いやすくなっています。チャットツールでは短いメッセージのやり取りが多くメッセージごとにタイトルを付けられないため、プロジェクトやタスクのまとまりでグループを作成し複数トピックの会話が混ざらないように運用されます。そのためにはトピック単位でグループ設定が可能なツールである必要があります。古典的なツールでは同じメンバーで複数のグループが作成できず、期待する運用ができない場合があります。同じメンバーでも、別グループを作成し各グループに目的を設定できるツールを選びましょう。
データファイルの送受信と保存期間
ビジネスのコミュニケーションにおいてチャットツールでのデータファイルの送受信は円滑な情報共有手段として非常に有用です。ほとんどのツールはデータファイルの送受信をサポートしていますが、見落としがちなのがそのデータ保存期間や最大転送量です。ツールによっては一度送ったデータの保存期間が1週間と決められていたり、最大転送量が20MBまでと決まっているものがありますので注意が必要です。利用するプランによっても設定される期間や容量が変わる場合もありますのでよく確認してください。
途中参加者が履歴を読めるか
近年登場したツールは多くの場合、設定されたグループ(またはチャンネル、ルーム)の中に会話履歴が残されているため途中から参加したユーザも全ての履歴を読むことができ、過去の経緯を把握することが可能です。古典的なツールでは履歴は当時会話に参加していたユーザに関連づけて残されているため、途中から参加したユーザは過去の履歴を見られないので注意しましょう。
既読表示
様々なメッセージがやり取りされるチャットツールですが、どのメッセージが誰に読まれているかを把握できるよう既読表示(開封表示)をしてくれるツールがあります。実際に読んだか、ただチャットを開いただけかの判断はつかないためあまり有用でないという意見もありますので、機能として有用かは検討した方が良いかもしれません。
Offline送信
チャットツールの中には、話しかけた相手がオフラインの時にメッセージを送れないものがあります。このようなツールでは、相手がオフラインの時に情報を送りたい場合にはメーラーを使うなどしなければならず情報が色々なツールに分散してしまうため注意が必要です。
ビジネス向け、人気のチャットツール紹介
いくつかのチャットツールの特徴を説明していきます。
Slack 多機能で拡張性の高いチャットツール
チャットツールとしては直感的でシンプルなUI/UXを持つツールとして爆発的に人気を獲得したツールです。
- チャットの履歴はチャンネルに保存されていて、チャンネルに参加したユーザは全ての履歴を確認できます。
- プロジェクトという単位でチームを管理可能で、複数のプロジェクトを作成しプロジェクト毎にチャンネルを作成できる点は非常に特徴的です。これにより様々な組織形態に対応した運用を可能にしています。
- 既読の機能がないため、誰がどのメッセージを確認したかはわからない作りになっています。
- 様々なツールが拡張機能(App)をSlack上で提供しており、Appを組み合わせることでチャットを中心とした効率的な意思疎通を可能とし、チャットを通してやり取りされたデータ等を別ツールを用いてシームレスに管理することができます。
Skype for Business 多くの企業で利用されるチャットツール
Office365を利用している場合、Skype for Businessが自動的に選択肢に入ってくるでしょう。比較的古典的なチャットツールです。
- ステータス機能があるため、相手が会議中か、離席中か知ることができます。また、このステータスはOiffice365のカレンダーと同期することができます。
- チャットの履歴は参加していたユーザにのみ残されているため途中から入ったユーザは履歴を確認できません。
- チーム用のチャットルーム機能も実装されてはいますが、現在のところメインとして扱われるのは個人間チャットのようです。
- 個人間チャットでは既読の機能が付いているため、メッセージが読まれたかわかるようになっています。
- ユーザ情報に関してLDAPなどを使った人事システムと連動させることが可能で、統合した運用が可能です。
- PCの利用が一定時間ないと離席中のステータスとなり、現在作業中かわかりやすくなっています。
Facebook Messenger シンプル、社外とのコミュニケーション向け
Facebookの提供するメッセンジャーで、スタートアップや営業でよく使われるツールです。利用される最大の理由はFacebookユーザの多さであり、新規の取引相手に利用登録を依頼する必要がなくすぐに繋がり連絡がとれるようになることにあります。
- チャットの履歴はグループに残されているため途中から入ったユーザも履歴を確認することが可能です。
- やりとりで複雑なコミュニケーションを必要としていない(又は複雑なコミュニケーションは電話や直接会って話をする)、チャットツール自体に高度な機能を求めていない場合には有用です。
- 誰がどのメッセージまで見ているかといった既読通知機能があるため、情報が誰に伝わっているのか把握しやすくなっています。
- Facebook Messengerの正式版はwebで提供されている機能だけでアプリ等はありません。しかし、多くの3rdパーティ製のアプリが出ていますのでそちらを利用できます。
別途Facebookが提供するWorkplace by Facebookも近年人気が出ており、その中にWorkplaceチャットという機能があります。組織としてユーザを管理しつつ外部とのやりとりも許容する体制にする場合はこちらを検討してみるのも良いかもしれません。
まとめ
テキストチャットの概要を説明すると共に、Slack, Skype for Business, Facebook Messengerのご紹介をしました。数多くのチャットツールがありますので、利用用途と検証を進めた上でツールの選定の参考にしてください。