働き方改革などで注目を集めるテレワーク。
業務の生産性の向上や、社員のQOL(Quality of Life)の向上など、様々な効果が期待できる反面、テレワークをする社員・オフィスにいる社員にとってデメリットとなることもあります。
今回はテレワーカー(テレワークで働く人)・オフィスワーカー(オフィスで働く人)それぞれの立場から、テレワークをするときに生じるメリット・デメリットとそれらの対策方法についてまとめました。
テレワークとは
テレワークとは、時間や場所にとらわれない働き方のことです。
情報通信技術(ICT : Internet Communication Technology)の発展によりインターネットを介して地理的に遠くの人と働くことが可能になり、オフィスの外(自宅やカフェ、サテライトオフィスなど)で働いたり、国外の仲間と働いたり、従来の働き方と違う様々な就業形態が可能になりつつあります。
【クイック解説】テレワークとは?企業への導入率や導入するメリットのまとめ
社員にとってのメリット
通勤の必要がなくなる・自分や家族に時間を使える
テレワークの導入により、満員電車に乗るストレスがなくなり、通勤時間も削減できます。
片道1時間かけて通勤している場合は一日2時間、一週間で10時間、一ヶ月では40時間もの時間を捻出できることになります。こうして作り出した時間は「家族とのコミュニケーションを増やす」「勉強してスキルアップを行う」「趣味に没頭する」「ゆっくり休養する」など様々なものに活用でき、人生をより豊かなものにすることができます。
好きな場所に住める
通勤を考慮して居住する場所を選ぶ必要がなくなるので、自分の好きな場所に居住することができるようになります。趣味を生かすためや家族の生活を重視した住まい選びも可能になります。
作業効率が上がる
オフィスではさまざまな干渉や雑音などにより仕事がなかなかはかどらないことがありますが、テレワークではそのような仕事を邪魔するものがないために集中力を生むことができ、また自分のペースで仕事していくことができるので生産性の向上が期待できます。
コミュニケーションの時間が短くなるといった側面もありますが、その反面、電話などで話す際には、限られた時間の中で必要なことを話すようになり、より集中してコミュニケーションをとることができるようになります。
自律的自己管理的な働き方となる
テレワークの場合はオフィスと違ってあれやこれや指図する人がいないため、すべて自分で判断して、自律的な働き方が可能になり、自己管理能力が高まります。成長欲求を満足されることができ仕事の対する満足度や意欲なども向上することが期待できます。
育児・介護との両立をしやすい
また、テレワークの中でも特に在宅勤務が可能になると、育児中や介護中の場合も、仕事との両立をしやすくなります。
常時在宅勤務ができる場合、子供の年齢・要介護者の要介護度にもよりますが、在宅しながら子供や要介護者の面倒を見ることが可能となります。
普段保育園に行っている子供が病気になると仕事を休まなければなりませんが、在宅勤務ができれば、フローレンスなどの自宅訪問型保育を利用することで、子供の面倒を見てもらいながら家で仕事をすることが可能です。また、在宅勤務によって通勤時間が短縮されるため、その分育児・介護に使える時間は必然的に長くなります。
好きなスタイルで仕事ができる
オフィスで働く場合は周囲の目もあるので、身だしなみや行動には気を付けなければなりません。「仕事にふさわしい服装・行動」は人によって認識が異なるため、オフィスでは「自分のスタイル」と「職場のスタイル」が合わない場合は職場に合わせて我慢しなければなりません。
在宅勤務であれば周囲に気兼ねすることなく、自分が最も生産性を上げられるスタイルで仕事をすることができます。動きやすいラフな格好で、お菓子を食べ、音楽を聴きながら仕事をしても誰も気にしません。
企業にとってのメリット
労働生産性の向上
総務省の調査によれば、在宅勤務を含むテレワークを導入した企業の50.1%が「労働生産性の向上」をテレワークの導入目的として挙げています。また導入した企業の実に82.1%が「労働生産性向上に効果がある」という回答をしており、多くの企業で生産性向上の実績があることが分かります。
新たな人材の確保が可能となる
まず企業にとってのメリットとして、テレワーク導入により、今まで通勤では働くことができなかった人材の確保ができることが挙げられます。
テレワークにより通勤の問題を減らすことができるため広範囲に優秀な人材を確保することができるようになります。地理的に就労が困難と考えられていた多くの人々でも貴重な人材となっていきます。
また子育てや介護のために働けなかった人々たちもテレワークにより毎日通勤しなくても在宅で仕事ができるようになるため、企業にとっては重要な人材候補になりえます。
このように人材の確保の幅が多様化するため労働参加率も向上することが期待できます。
離職抑制・就労継続ができる
多くの人が子育てや介護のために離職しなければならない状況が発生しています。そのため知識や技術の継承がうまく行われずに企業にとって大きな損失となってきました。
しかしテレワークの導入によりそのような人達が継続して働くことができるようになり知識や技術の喪失を防ぐことができます。
また育児休暇や介護休暇などのブランクを作ることなく継続して勤務できるので企業にとっても以前とは違ってシームレスな事業の継続が可能になります。
オフィスコストを削減できる
在宅勤務中は家にあるスペースと設備を利用するため、コスト削減に寄与できる可能性があります。
在宅勤務を最初に導入する際には初期コストはかかるかもしれませんが、長期的な目線で見た場合、オフィスレイアウトや会議室設備の最適化や、オフィスサプライの利用削減が望める部分も企業側にとってはメリットと言えます。
また、通勤費用もかからないため交通費を支給する必要もなくなります。
企業イメージが向上する
テレワークを導入している企業は積極的に働きやすい環境づくりを行っていて、人材を大切にするイメージがあるので、好感度アップにつながります。
テレワークによりワーク・ライフ・バランスを考慮した就労ができるようになるため、そのような企業に勤めたい人材も増えるので、企業の人気度も向上すると思われます。
事業継続計画(BCP)の一助となる
BCP(Business Continuity Planning、事業継続計画)とは、、災害などの緊急事態が発生したときに、企業が損害を最小限に抑え、事業の継続や復旧を図るための計画のことです。
BCPの一部として、日頃からテレワーク制度を導入することで災害時に備えることができます。
突然の災害が起こっても、事業を継続できるようにするためにもテレワークを導入しておくことは大切です。非常時には通勤しなくてもオフィス以外の自宅やサテライトオフィスなどで勤務できる体制をとっておけば、問題なく事業継続が可能になります。
BCPというと、東日本大震災などの数年~数十年に一度の大災害を想定しがちですが、実は毎年発生するようなケースを考えることも重要です。
例えば、冬の台風や夏のインフルエンザ流行時です。
出社せずとも働ける環境を作っておくことで、台風の際にはあらかじめ在宅勤務の指示を出すことができます。台風の到来時に、電車が動いているかどうか気にする必要がなくなります。
また、社内でインフルエンザ流行の兆しがあれば、流行している部署を対象に在宅勤務を指示することによって社内での感染の蔓延を防ぐことができます。(もちろん、体調が悪い人は仕事をせずにまず休養することが重要です。)
結果として、社内におけるパンデミックの予防となり、会社の生産性を維持することができます。
テレワークする社員にとってのデメリット
一方、テレワークをする社員にとってのデメリットは何でしょうか。オフィスにいるときと違い、以下のようなデメリットが発生することが考えられます。
自己管理が難しくなる
テレワーク、特に在宅勤務の場合、オフィスとは異なり周りの人の目をまったく気にすることがありません。またソファー、ベッド、テレビなどさまざまな誘惑があります。そのため時間の使い方が自分次第になってしまいます。
サテライトオフィスなど自宅外で働く場合も自宅に比べると誘惑は少ないものの、自分の上司や同僚が近くにいないため、良い意味でも悪い意味でもリラックスした環境となります。
そのことがメリットになり、集中して仕事の効率が上がる人もいますが、仕事のメリハリがつかずにだらけてしまい、仕事の効率が下がってしまう人もいます。結果的に長時間労働になってしまうことも考えられ、対策が必要です。
【対策1】テレワーカーの勤務時間をオフィスワーカーと合わせる
テレワーク・在宅勤務が導入されている企業では、合わせてフレックス勤務をできるところが少なくありません。
しかし、ある程度勤務時間を合わせ、勤務時間内でオフィスにいる上司や同僚とのコミュニケーションを頻繁に行うよう促しましょう。これによって、テレワークでの仕事にメリハリをつけることができます。
【対策2】成果を見える化する
ただダラダラと時間を過ごすのではなく、「今日はここまでやる」という目標と、それに応じた日々の成果を定義することが重要です。
テレワーカー本人が労働時間の管理を自発的に行えるようにすることも重要です。労働時間・成果の管理を可視化することは長時間労働を避ける上でも有効です。
「ポモドーロテクニック」と呼ばれる時間管理メソッドがあります。この方法は紙・ペン・タイマーさえあれば始めることができますが、専用アプリを使うこともできます。
詳しくはこちらの記事(全部で3回のシリーズです)をご覧ください。
また、自己管理のためのタスク管理ツールを使う方法もあります。こちらの記事で紹介しているツールはすべて無料で使うことができます。
【対策3】自分を相手に見せる
それでもまだ怠けてしまう場合は、ビデオ会議のシステムなどを利用して自分の仕事をしている姿を相手に見せることも効果的です。
人から見られていると意識することで、オフィスにいるような緊張感を維持することもできます。
コミュニケーション不足や孤独感を感じる
オフィスにいればすぐに同僚に話しかけることができ、雑談も含めて簡単にコミュニケーションをとることができますが、テレワークをしていると気軽に話しかけづらく、チーム内外でのコミュニケーションの頻度が少なくなり、密度も薄くなりがちです。
テレワークを実施しているとこのようなコミュニケーション不足や、それによって孤独感を感じるといったデメリットがよく起こります。
【対策1】常にオンラインにする
できるだけ常にオンラインでいつでも相手とコミュニケーションをとることが可能な状態にしておくことでコミュニケーションがしやすくなります。
【対策2】オンライン雑談タイムの導入
また、必要な時だけでなく、オフィスで雑談していた時と同じような環境をつくることによりコミュニケーションの頻度をオフィスと同程度まで上げることができます。
これにより、孤独感を感じることがないようにすることが可能になります。
雑談タイムや休憩チャットなどの仕事以外の話をテレワーカーでもできるためのタイムスロットを設けるなどの工夫により孤独感をなくすことができます。
テレワークをする社員・オフィスで働く社員両方にとってのデメリット
テレワーク制度の導入の仕方にもよりますが、全社員が常にテレワークをするのでない場合、テレワークをする社員・オフィスで働く社員がともに働くことになります。
このとき、両者が直面するデメリットについて考えてみましょう。
進捗把握・評価が難しくなる
上司・部下のどちらかまたは両方がテレワークをしている場合、上司から部下の状況が見えづらいために進捗の把握がむずかしくなるというデメリットがあります。
また部下にとっては上司が進捗をしっかり把握できないために正しい評価をしてもらえないのではという懸念があります。
【対策】目標を成果物単位で定義する
その日の目標を成果物単位などで定義することで、その目標に対する進捗を可視化することができます。
前日または始業開始時には上司と部下が直接会話をしてその目標を決めることで目標に対する理解をお互いに確認しましょう。
また、目標にもとづいて今日はどれくらい進んだか・進まなかったかの進捗を報告することで進捗把握に関する懸念をお互いになくすことができ、かつコミュニケーション不足も解消できます。
テレワークにおいては成果物の定義と進捗の可視化が重要になります。
連絡を取りづらい/集中を妨げられる
テレワーカーやオフィスにいる人が互いにコミュニケーションをとりたいとき、今現在連絡を取ってもいいのか分からず、コンタクトしづらく感じることがあります。
また、逆の立場で、集中して仕事をしている最中に連絡がきて集中が途切れてしまい、効率が下がってしまうと感じてしまうことがよくあります。
これらは、テレワークでは相手を直接見ることができないため、現在相手が何をしているか分からないことに起因するものです。
【対策1】自分の現在のステータス(忙しい、連絡可など)を相手に知らせる
コミュニケーションツールなどを使って、自分の現在の状況が相手にリアルタイムでわかるようにすることで相手の状況が把握しやすくなります。
これは「プレゼンス(在席表示)機能」と呼ばれ、現在様々なツールが世の中にあります。詳しくはこちらの記事をご覧ください。
【対策2】スケジュールを相手に知らせる
また、カレンダーツールなどを使って、一日のスケジュールを表示して集中したい時間帯、連絡しても構わない時間帯など相手が分かるようにすることでコミュニケーションする予定などがたてやすくなります。
このようにツールをうまく利用をすることで相手の状態を把握しやすくなり、コンタクトすることへの躊躇や集中の妨げを防ぐことが可能になってきます。
コミュニケーションにおいて、情報伝達量が減少する
テレワークをしていると、質疑応答やある議題についての検討など複雑な話をするとき、電話、電子メール、チャットだけでは十分な情報量が伝わらないことがあります。
特に、毎日テレワークをしていない場合(オフィスに出勤する機会がある場合)、この議題については次に直接会ったときに話そう、などとコミュニケーションの機会を先送りすることはよくあることです。
【対策】会議では視覚情報をつかう
コミュニケーションにおいて十分な情報量を伝えるためには視覚化された情報伝達が不可欠になります。ただの電話のやりとりではなく、ビデオ会議ツールなどを使いましょう。
- Webカメラを使って、相手の顔を見ながら会話する
- 資料なども画面を共有し、お互いが同じものを同時に見る
- ホワイトボード機能を利用してお互いに考えていることが相手に正しく伝わるよう工夫する
こちらの記事ではテレワーク向けのweb会議ツールについて紹介しています。
まとめ
テレワークを実施しているとさまざまなデメリットが考えられますが、ソフトウェアツールの機能を十分に生かしたり、上司と部下でテレワークの実施法を話し合いながら運用ルールを決めていくことで効率的なテレワークが可能になってきます。
すべてのテレワーク参加者で工夫しながらテレワークを実施することが大事です。